Lee Ritenour氏公演で来日したChris Coleman氏に、MEINLシンバルへのこだわりについてインタビューしました。
ブルーノート東京でLee Ritenour氏と共演されたMEINLアーティストのChris Coleman氏に、彼自身について、MEINLシンバルとの出会いなどについて、お話を聞かせていただきました。
これまでにも何度となく来日を果たしているChris Coleman氏ですが、ブルーノート東京での公演は今回が初、そしてLee Ritenour氏との共演も今ツアーが初めてとのことでした。
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キョーリツコーポレーション(以下KC):今回はLee Ritenour氏のバンドとしての来日となりましたが、最近の活動について聞かせていただけますか?
Chris Coleman氏(以下CC):一番最近だと、ロシアのアーティスト、Grigory Lepsとのレコーディングかな。それからSheila E、Larry Carlton、それにゴスペル関連の仕事がいくつか、それともちろんLeeとのツアーだね。
日本の後はマニラに行って、いったん帰国してから今度は2週間ほどポップアーティスト、Agnes Monicaとの仕事でインドネシアに行くことになっているよ。
KC:まず最初に、「ドラマー:Chris Coleman」についてお聞かせいただけますか – プロのドラマーになろうと思われたのはいつ頃ですか?
CC:15歳くらいだったかな。誰かに誘われてライブに出て、ほとんど話したこともないような相手だったんだけど、1回だけ一緒にリハをやって、曲を覚えて本番に臨んだんだ。
ライブが終わった後に、彼がぽんと$60くれてね。何が何だか分らなかった。まだ15歳だったからね。そうしたら彼が、「今日の出演料だよ」って言うんだ。驚いたよ!
もちろん、お金をもらうためにどうこうするってことはなかったけれど、自分が好きでやっていることに対して報酬をもらえるんだ、ってことが分かった。
ただ、まだ15歳で、そこからすぐにプロの道に進もう、とはならなかった。Drummer’s Collective (USのドラム専門学校)に進学するまで、決断には至らなかった。
だからその後も普通に色んな仕事をしたよ。ガソリンスタンドや日雇いの仕事、刑務所の看守やファーストフード、セールス、色々やってみた。それは今でも同じなんだけれど、音楽以外のこともやりたいんだ。最近では、レストランのフランチャイズをやってみようかと思っているところだよ。
Drummer’s Collectiveは本当に素晴らしい学校だった。
プログラムを終えて、実家に戻ってから、さあどうしよう、となって、その時に父が「お前はしっかりとした教育を受けてきたんだ、次は扉を開けて、その先に進むべきだろう」と言ってくれた。それがプロの道に進む後押しになったよ。
KC:なぜ固定バンドではなく、ソロドラマーとしての活動を選んだのですか?
CC:(固定バンドも)試してはみたんだけど、すぐに飽きてしまったんだ。それ以上のことができる、と思ったしね。
同じバンドで常に特定のジャンルの音楽を演奏する、ということにあまり魅力を感じなかった。
学校ではありとあらゆるジャンルについて学んだし、それを生かさない手はないと思ってね。色々なスタイルを理解して、技術を習得して、PrinceやChaka Kahn、Lee Ritenour、Joe Farrell、誰のどんな曲でも叩けるようになりたかったんだ。
KC:様々なアーティストと共演されていますが、その中でも常にご自身のスタイルが確立されていますね。
CC:そう、それが大事なんだ。
自分は、必死に独自のスタイルを築こうと努力してきた世代の最後の方の一人じゃないかと自負しているよ。
何も知らずにVinnie ColaiutaやDennis Chambersが参加しているアルバムを聴いていても、すぐにドラムを担当しているのが彼らだって分かるのは、彼らが独自のスタイルを持っているからなんだ。
もちろん色んなアーティストの影響を受けてはきたけれど、それぞれの中から必要な要素を選りすぐって、集めて、そうやってChris Colemanの音を形作ってきた。
だけど、最近の若いドラマー達はYoutubeや様々なメディアで色んなアーティストのプレイに触れることができて、それをコピーしている。だからみんな同じように聞こえてしまうんだ。
自分はその点が違っていた。学校に行って、そこで「そんなのはジャズじゃない」、「ちゃんとジャズを学ぶべきだ」と言われて、色々なことを教わってきた。基礎からしっかり学んで、基礎を身に付けたからこそ、各プレイヤーならではの「色」を聴き取れるようになる。
たとえばJeff Tain WattsやElvin Jones、Roy Haynes、Tony Williams… 彼らのプレイを聴いて、その違いが分かるようになる。あぁこんなことをやってるな、こういう手癖があるんだな、と思いながら彼らのプレイを聴いているうちに、ある日突然、自分自身のスタイルを作れるようになる。いつも同じバンドで演奏していたら、なかなかそうはならないんだ。
別に特定のバンドに所属することが悪いというわけじゃない。Carter Beauford (Dave Matthews Band)やRay Luzier (David Lee Roth band、KORN)、そしてSimon Philips (The Who、TOTO、Michael Schenker Group)、バンドとして活動している優れたドラマーも沢山いるしね。
全体像がどうなるかを考えてプレイしていれば、誰とでも合わせられるはずなんだ。
今名前を挙げた彼らは、特定のバンドやメンバーと一緒にやっている中で、自分自身のサウンドを確立させている。それは自分のやり方とは違うけれど、彼らのようなドラマーの存在は自分にとっての刺激になってもいるんだ。
KC:「Chris Colemanバンド」を組むご予定はありますか?
CC:そうだね。これまでに出した教則DVDでは一緒にやっているメンバーの中には、自分のオリジナル曲を一緒に演奏してもらったプレイヤーもいるんだ。
いつか自分のバンドでの来日もできたらいいなと思っているよ。
KC:MEINLアーティストになられたのが5年前、とのことですが、MEINLシンバルとの出会いについて教えてください。
CC:そう、2007年からだね。
それ以前は主にSABIAN、子供の頃はZildjianを使っていたよ。学校で使っていたのはPAiSTe。だから主だったブランドは全部使ったことがあるし、それぞれの良いところも悪いところも知っているつもりだよ。
2001年、当時Guitar Centerのドラマーを目指していたんだけれど、その当時ものすごく影響を受けていたドラマー、Marco Minnemannが当時、MEINLアーティストだったんだ。
彼のライブを見て、「あのAが二つ並んだロゴはどこのメーカーなんだろう?」と思った。よりにもよって、AA(訳注:アル中患者のための禁酒会、Alcoholic Anonymousのこと)って!…てね。
変なロゴだなぁと思って見ていたんだけれど、音を聴いて思わず唸ったよ。チャイナもスプラッシュも、どのシンバルからも素晴らしい「音色(Tone)」が感じられた。それで本当にすっかり気に入ってしまったんだけれど、当時はまだMEINLシンバルはあまり出回っていなくて、以来数年間は楽器店に行ってはMEINLシンバルを探して買い集める、ということを続けていたんだ。
2006年にLAに越してきて、Trevor Lawrence Jr.と知り合った。彼のスタジオに行ったら、MEINLのシンバルがずらりと並んでいて、それで彼に「この会社(MEINL)のエンドースを受けているのか」と聞いたんだ。
その晩、彼のスタジオに2時間くらい籠って、全部のシンバルを試させてもらったよ。本当にどれも素晴らしかった。その様子を見ていたTrevorがMEINLの担当者を紹介してくれて、そこからうまく話が進んでエンドースを受けることになったんだ。
KC:それ以来、他メーカーのシンバルは使っていない、と。
CC:個人的に、Zildjianはあまり新製品の開発に積極的ではないように見えた。それでSABIANを使うようになった。SABIANは色々と変わったものを作ったりしていて、そのバラエティの豊富さに魅かれたんだ。でもそこから特に(エンドース契約の話など)先には進まなかった。
MEINLシンバルの音を初めて聴いた時はまだ、MEINLもSABIANもどちらとも選び難い感じだった。でもMEINLには親しみとか愛があると思ったんだ。ハンドメイドで、昔からの製法で作られていて…最終的に迷いはなかった。聴けばその良さは分かるよ!という感じだった。
KC:今回のステージでは比較的スタンダードなシンバルラインアップとなっていますが、状況によって色々と異なるシンバルを使い分けていますよね?
CC:色んなアーティストと一緒にプレイするから、固定の「スタンダードなセッティング」というのは特にないんだ。色々と試してみたいし、その時々の演奏ジャンルによっても変わってくるしね。
ただ、変わらないものもあるよ。ライド(B20EDMR)はほとんど変えない。このライドはどんな場面、どんな現場でも使えるんだ。
たとえばLeeとやる時は、細くて軽めのスティックでジャズっぽい音にするし、ポップスやロック、ファンク、フュージョンなら重めのスティックで音量をアップさせる。本当に色んな使い方ができるライドだね。
あと、普段はよりドライな音にするために、裏側にテープを貼って使うんだ。これで本当にドライな音になる。スティックの音が引き立って、音量の調節もしやすくなる。音量を抑えた感じではなくて、素早く抑えた音になるんだ。
色々な現場で演奏しているけれど、このライドだけはいつもそこにある。
CC:主にクラッシュかな。ポップスの時にはByzance TraditionalかBrilliantのミディアムを使うよ。TraditionalとBrilliantを使うと、音にバラエティが出るんだ。
ジャズの時はExtra Dryとフィルターチャイナ、実用的なものを選ぶことが多い。本当にプレイするジャンルによって全然変わってきてしまうんだ。
KC:新しくMEINLに作ってもらいたいシンバルや、シグネチャーモデルを出される予定はありますか?
CC:いくつか温めているアイディアはあるよ。まだここでは言わないけどね。
(シグネチャーモデルについては)色んな人に聞かれるけれど、それも起こるべきタイミングで起こるんじゃないかな。
KC:すでに現在お使いのByzance Extra Dry Rideシンバルがシグネチャーのようなところもありますが…。
CC:確かにね。
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Chris絶賛のByzance Extra Dry Rideシンバルについて、詳しくは下記のMEINL日本語公式サイト製品ページをご覧ください:http://www.kcmusic.jp/meinl/cymbal/byzancextr.html
各シンバルのサウンドサンプルも聞けるMEINLの日本語公式サイトはコチラから:http://www.kcmusic.jp/meinl/cymbal/top.html